アルコール依存症の治療でまず大事なのが、「本人の認識」である。多くのケースでは、アルコール依存症の患者は自分がアルコール依存症であることを認めたがらない。認めてしまうと飲酒ができなくなってしまうからである。何よりもまず、本人に疾患の自覚と治療の意思を持たせることが大切であり、回復への第一歩となる。
アルコール依存症の人の過剰な飲酒は、意志が弱いから・道徳感が低いからと言われたり、不幸な心理的・社会的問題が原因であると考えられがちだが実際はそうではなく、多くの場合この病気の結果であることが多い。つまり、アルコールによって病的な変化が身体や精神に生じ、そのために過剰な飲酒行動が起こるということである。このことをまず本人や周囲の者が理解し、認めることが、この病気から回復する上での欠かせない第一歩となる。
ただ、一度アルコール依存症になってしまうと治療は難しく、根本的な治療法といえるものは現在のところ、断酒しかない。しかし本人の意志だけでは解決することが難しいため、周囲の理解や協力が求められる。重度の場合は入院治療が必要な場合もある。但しそれでも完治することはない不治の疾患であり、断酒をして何年・十何年と長期間経過した後でも、たった一口酒を飲んだだけでも早かれ遅かれ、また以前の状態に逆戻りしてしまう。そのため、治療によって回復した場合であっても、アルコール依存症者が一生涯断酒を続けることは大変な困難を要する。
なお、現在では、精神科において断酒会やAA(アルコホーリクス・アノニマス)等自助グループへの参加を奨励すると共に、ノックビン、シアナマイド経口薬などの抗酒剤の使用により、アルコール摂取を禁止し治療を進める病院が多い。
治療薬
これまで日本国内では薬物の治療法はないとされてきたが、現在、抗酒剤とは別に、飲酒欲求そのものを抑制する薬剤物質としてのアカンプロセート(商品名:キャンプラル)が注目されている。日本国内では未だ認可されていない。
アカンプロセート(en:Acamprosate) - 脳内の伝達物質(飲酒欲求にスイッチを入れる物質)であるグルタミン酸によって引き起こされる脳内の過剰な欲求を緩和する。即ち、アカンプロセートが、神経細胞の受容体(スイッチによる命令を受け入れる部署)を封鎖して、伝達物質グルタミン酸分子の受容体への付着を防止することで欲求命令の伝達を防ぐ。アルコール依存症者の脳にはこのグルタミン酸が特に多量に見られる。(原因は不明) 全ての患者に効能が認められるわけではないが、アルコール依存症者の治療にアカンプロセートが投薬され、一定の成果を挙げている。
現在、日本では「日本新薬」で研究が進められており、また久里浜アルコール症センターにて治験中で、数年後に認可されると見られている。服用に際しては自助グループや精神療法との併用が効果的で望ましいとされる。
アカンプロセート開発史
1984年:フランスのメラム社が癲癇及びアルコール依存症の治療薬として開発
1987年:同社、フランスにて同薬剤の仮認可を取得
1989年:同社、同薬剤をフランス薬剤市場にその後 ヨーロッパ規模での認可に向けてフランスのリファ社(メルク社の孫会社)がアカンプロセートの所有権を取得
1995年:ドイツにて「キャンプラル」として認可
1996年:リファ社、アカンプロセート含有薬剤「キャンプラル」をドイツ市場に
2004年:7月、アメリカにてアルコール依存症患者の断酒継続の為に、「キャンプラルが認可」され、治療が始まった。
副作用
下痢、鼓腸(放屁)、嘔吐、痒み、発疹 :依存性は認められない
悪化させる恐れがある薬
ベンゾジアゼピンは、急性アルコール離脱の管理に有用な一方、長期的に使用した場合なアルコール依存症を悪化させる。アルコール依存症に対して慢性的にベンゾジアゼピン系を処方した場合、服用していないケースよりもアルコール断絶を達成するための確率は低い。このクラスの薬は、一般的に不眠や不安の管理のためのアルコール依存症に処方されている。ベンゾジアゼピンまたは鎮静催眠薬が回復過程で投与された患者は、鎮静催眠薬を処方された後に再発する確率が高く、4倍以上であった。ベンゾジアゼピンの長期的服用者は急激な断薬をすべきではない。それは重度の不安とパニックが生じる可能性があり、アルコール乱用再発の危険因子であると知られている。6-12ヶ月の減薬体制が、離脱強度を減少させ、最も成功しやすいことが判明している。
多重の中毒
アルコール依存はその他の向精神薬中毒治療が必要なことがある。患者に最も多く共通した依存はベンゾジアゼピン依存症であり、研究では10-20%のアルコール依存患者がベンゾジアゼピン乱用であった。ベンゾジアゼピンはアルコールへの欲求を増加させ、量を増やさせる。ベンゾジアゼピン依存はベンゾジアゼピン離脱症候群やその他の健康問題を避けるために注意深く減薬を行う必要がある。
その他の鎮静催眠薬への依存、ゾルピデムやゾピクロン、麻薬や違法薬物などもアルコール依存症では一般的である。
アルコールは鎮静催眠薬であり、バルビツール酸・ベンゾジアゼピン・nonbenzodiazepinesなど他の鎮静催眠剤と交差耐性がある。催眠鎮静薬からの離脱は医学的に重症であり、慎重な管理なしでは精神病または発作の危険性がある。
